平成１７年１１月２５日
国立国会図書館調査及び立法考査局文教科学技術調査室・課
アメリカ合衆国の音楽著作権管理団体におけるレストラン等での音楽の演奏に係る著作権使用料の規定について（回答）
アメリカ合衆国の音楽著作権管理団体は、主要なものとして、アメリカ作曲者作詞者出版者協会（American Society of Composers,
Authors and Publishers; ASCAP）、放送音楽会社（Broadcast Music Incorporation）及び欧州舞台作詞者作曲者協会（Society
of European Stage Authors and Composers; SESAC）の３団体がある。
これら３団体におけるレストラン等での音楽の演奏に係る著作権使用料の規定は、以下のとおりである。
１ ＡＳＣＡＰ
ＡＳＣＡＰのウェブサイト（http://www.ascap.com/）には、レストラン向けの著作権使用料に関する資料が見当たらなかった1。そこで、ウェブサイト上に掲載のあった契約書式のうち、レストラン等での使用と類似すると思われる、会員制クラブ（private
club）向けの著作権使用料について、参考までに記すこととする。
（１）会員制クラブにおける著作権使用料の額2
会員制クラブにおける著作権使用料の体系は、ライブ演奏（live entertainment）と録音物の再生（mechanical music）の２つに分かれる。ライブ演奏における使用料は、当該施設における年間のライブ演奏に係る総経費の額（annual
expenditure for all entertainment at the premises）を基準として、以下のとおり定められる。
○ライブ演奏に係る著作権使用料の額
| 年間総経費の額（ドル） |
年間使用料の額（ドル） |
| 5,000.00未満 |
154 |
| 5,000.00-9,999.99 |
231 |
| 10,000.00-14,999.99 |
303 |
| 15,000.00-24,999.99 |
457 |
| 25,000.00-34,999.99 |
605 |
| 35,000.00-49,999.99 |
754 |
| 50,000.00-64,999.99 |
902 |
| 65,000.00-79,999.99 |
1,139 |
| 80,000.00-99,999.99 |
1,518 |
| 100,000.00-119,999.99 |
1,898 |
| 120,000.00-139,999.99 |
2,277 |
| 140,000.00-159,999.99 |
2,657 |
| 160,000.00-179,999.99 |
3,036 |
| 180,000.00-199,999.99 |
3,416 |
| 200,000.00-249,999.99 |
3,795 |
| 250,000.00-299,999.99 |
4,180 |
| 300,000.00以上 |
4,554 |
次に録音物の再生における使用料は、当該会員制クラブの会員数及び再生物が視聴覚的なものかどうかを基準として、以下のとおり定められる。
○録音物再生に係る著作権使用料の額
| 会員数 |
年間使用料（非視聴覚的再生） |
年間使用料（視聴覚的再生） |
| 1-300 |
75ドル |
112.50ドル |
| 301-500 |
100ドル |
150.00ドル |
| 501-700 |
120ドル |
180.00ドル |
| 701-1,000 |
135ドル |
202.50ドル |
| 1,000以上 |
150ドル |
225.00ドル |
（２）レストラン協会への加盟施設に対する割引制度
ＡＳＣＡＰでは、飲食業協会割引制度を設けており、現在２３の飲食業協会がこの制度に加入している3。この制度の内容は、これらの協会に加入しているレストランにつき、①著作権使用料が１０％の割引になるほか、②ＡＳＣＡＰからの連絡がある前に使用許諾契約の申込みを行い、かつ、著作権使用料の請求から３０日以内に支払いを行った場合には更に５％の割引がある、というものである。しかし、例えばオクラホマ・レストラン協会加盟店の場合には、著作権使用料をその請求日から３０日以内に納めることなどの一定の要件を満たせば、加入当初は２５％、翌年からは、１０％の割引がその著作権使用料に対して行われ、また、年間一括払を選択すると、２０％の割引となる特典も用意される4など、更なる特典が用意されている場合もある。
２ ＢＭＩ
ＢＭＩにおけるレストラン向けの著作権使用料の額は、以下の計算式により算定される5。ただし、292.00ドルを下回るときは、292.00ドルとなる。また、8,734ドルを超えた場合には、8,734ドルとなる。
｛（ライブ演奏使用料①）＋（音楽録音物再生使用料②）＋（チャージ加算金③）＋（ダンス使用料④）＋（テレビ・ラジオ受信使用料⑤）｝×（客席数［定数がなければレストラン総面積を20フィートで除した数］）
| 利用形態 |
１席あたりの使用料の単価 |
| ①ライブ演奏使用料 |
| ・複数の歌手・演奏家による場合 |
| ・5-7夜* |
4.80ドル |
| ・2-4夜* |
4.00ドル |
| ・1夜*以下 |
3.55ドル |
| ・単独の歌手・演奏家による場合 |
| ・5-7夜* |
3.45ドル |
| ・2-4夜* |
2.90ドル |
| ・1夜*以下 |
2.65ドル |
| ②音楽録音物再生使用料 |
| テープ、レコード、無料ジュークボックス、ＤＪ、ＶＪ及びＣＤその他デジタル録音物の場合 |
１種類ごとに2.30ドル |
| 多機能音楽録音物使用の場合の追加料金 カラオケ、ビデオテープ及びＤＶＤの場合 |
１種類ごとに以下の料金 |
| ・5-7夜* |
0.50ドル |
| ・2-4夜* |
0.35ドル |
| ・1夜*以下 |
0.25ドル |
| ③チャージ加算金（常にチャージを徴収している場合） |
1.55ドル |
| ④ダンス使用料（ダンスを見せ、又はさせている場合） |
1.55ドル |
| ⑤テレビ・ラジオ受信使用料（テレビやラジオだけで音楽を流している場合） |
1.05ドル |
※「１夜」とは、月５回以下の回数をいう。
（例１）客席数２００のレストランでＣＤのみをＢＧＭに流し、テーブルチャージを課さず、ダンススペースを設けていない場合の年間使用料：2.30×200＝460ドル
（例２）客席数５０のカラオケスナックで平日のみＤＶＤのカラオケを提供し、テーブルチャージを徴収しているが、ダンススペースを設けていない場合の年間使用料：（2.30＋0.50＋1.55）×50＝217.50＜292.00＝292.00ドル
（２）レストラン協会等への加盟施設に対する割引制度
ＢＭＩにおいても「飲食業協会割引制度」(Food & Beverage Association Discount Program）が設けられており6、現在６１の飲食業協会が加盟している。この割引制度の内容の多くは年間使用料の２０％が割り引かれるという内容となっているが、オクラホマ・レストラン協会の場合7のように、①年間使用料からの１０％割引、②割引制度実施前の契約更新者には更に１０％割引、③請求から３０日以内の支払いにより更に１０％割引、④複数店舗の使用料一括納入により更に割引（5-20％）という制度となっている場合もある。
３ ＳＥＳＡＣの場合
ＳＥＳＡＣにおけるレストラン向けの著作権使用料の額は、録音物の再生（mechanical music）とライブ演奏（live music）とに分かれ、客席数に応じて以下のとおり定められている8。なお、ＳＥＳＡＣはレストラン協会を対象とした割引制度を設けていない。
| 客席数 |
録音物の再生 |
ライブ演奏 |
| 標準的使用 |
拡張的使用 |
週1-2日 |
週3-4日 |
週5-7日 |
| 1-100 |
141 |
176 |
202 |
333 |
516 |
| 101-200 |
162 |
211 |
264 |
414 |
719 |
| 201-300 |
183 |
247 |
345 |
539 |
966 |
| 301-400 |
225 |
316 |
433 |
666 |
1,253 |
| 401-500 |
309 |
421 |
516 |
816 |
1,531 |
| 501-600 |
415 |
597 |
689 |
1,035 |
1,883 |
| 601-750 |
519 |
772 |
861 |
1,264 |
2,228 |
| 751以上 |
639 |
1,052 |
1,035 |
1,524 |
2,597 |
（単位：ドル）
（注）：「標準的使用（standard）」：「拡張的使用」以外の形態での使用をいう。
「拡張的使用（enhancad）」：入場料やテーブルチャージを徴収する形態やダンスを見せ、又はさせる形態での使用をいう。
1 同協会ウェブサイトのＡＳＣＡＰ General Licensingのページ＜http://www.ascap.com/licensing/generallicensing.html＞(last
access ：2005.11.24）において、レストランにおける使用についての契約書式があることが記されている。しかし、同協会は、その書式をウェブ上に掲載しておらず、電子メールでの請求により送付することとしている。2005年11月22日に同協会に対して書式の送付を電子メールで請求したが、現在のところ未着である。
2 ＡＳＣＡＰprivate club report form＜http://www.ascap.com/licensing/pdfa/privateclub.pdf＞(last
access:2005.11.24）
3 ＡＳＣＡＰ Customer Card:Restaurant Servieces＜http://www.ascap.com/licensing/benefits/restraunt
discounts.html＞［last access：2005.11.24］
4 この割引制度に加入しているオクラホマ・レストラン協会（Oklahoma Restraunts Association）のウェブサイトに収載されている”Member
Discount Programs and Endorsements”のページに掲載されているAＳＣＡＰの追加条項契約書（ＡＳＣＡＰ Rider
to License Agreement）＜http://www.okrestaurants.com/associations/2403/files/ascap.pdf＞（last
access：2005.11.24）に拠った。
5 ＢＭＩのレストラン向け著作権許諾契約書Music License For Eating & Drinking Establishments［LI-05/07-EDE・1］＜http://www.bmi.com/licensing/forms/ede.pdf＞に拠った。
6 ＢＭＩ and Your Food & Beverage Association / Music Licensing Discount
Program ＜http://www.bmi.com/licensing/business/discount.asp＞（last access：2005.11.24）
7 オクラホマ・レストラン協会の注４の出典と同じウェブサイトによる。
8 ＳＥＳＡＣのレストラン向け使用許諾契約書”ＳＥＳＡＣ Ｐｅｒｆｏｒｍａｎｃｅ License for Restraunts,Nightclubs
and Taverns”＜http://www.sesac.com/pdf/rest_notice_2005.pdf＞に拠った。